レポートの書き方 (学生実験) Encode: Shift-JIS

この説明は「レポートの書き方(大学1年生向け)」の続きで,対象者は機械工学実験I・福祉機器実験IIの「固体の温度伝導率の測定」を受ける学生と機械工学実験IIの「内燃機関性能試験II」を受ける学生である.

1.実験レポートの特徴
 実験レポートは実務では記録としての役割があるため,一般的な書き方があり,教科書で説明されている.教科書は「機械工学実験」・「化学実験」等のタイトルで多数の種類があるが,レポートの書き方はどれも一緒である.ただし時間優先な場面などもあり,レポートの形式は場面に応じた対応が要求される.授業では担当教官の指示を尊重する.
 記録なので実験レポートは実験の当事者不在でも第3者に理解可能なことが求められる.また記録は他の資料と共に保管されるので,資料検索のために日付やタイトル等を見易いところに示す.実務では複写をとることが多く,レポートは白黒コピーで済む事が望まれる.

2.レポートの読み易さ
 レポートは内容と見た目の両方が必要で,内容が良くても,見た目が悪いと読む気が失せる.読む人の負荷を軽減することは必要である.「汚い」,「レイアウトが悪い」,「字のサイズやフォントが不適切」などは絶対に避ける.さらに難しいことだが,説明を必要十分な長さにすることが,読む人の負担を軽減する.学生実験では以下の3点が主なポイントになる.
 またレポートの本筋から離れた内容を記述したければ「付録」という形式でレポートの末尾に記載するとレポートの本筋がスッキリとする.本筋から離れた内容を考察に記述すると,レポートの本筋が見え難くなる.見出しの番号は「付録1」やAppendixのAをとって「A1」などと振ることが多い.感想は不要で,意見は意見書という形で出す.

3.論理展開
 実験で測定したデータを整理・解析することが実験で重要な作業である.データ整理のポイントと解析のヒントを以下に示す.
 データ整理では,測定原理を考える必要がある.その理由は測定値が限定された条件下の物理量なので,データ整理の仮定で補正をする必要が生じる.簡単な例としてペンレコーダと熱電対で温度測定をする場合を考える.ペンレコーダで表示されているのは紙の上の距離であり,測っているのは熱電対の接点間の温度差である.これらから測定対象物の温度を計算するには,機器の設定や実験条件を考慮しなければならない.
 データ整理した数値は誤差と有効数字を評価する.その理由は誤差範囲内の大小の差や有効数字より多い桁数での議論を避けるためである.例えば陸上のトラック競技100走で使用するコースの長さ測定を考える.タイムを0.01秒単位まで記録し,選手が100mを10秒で走ると仮定すると,10cm未満のコースの誤差はタイムへの影響が0.01秒未満になる.このケースではコースの長さの有効数字は4桁ということになる.そのため,正確さを追求するとしてもμmオーダーで計測する必要は無い.測定の最小単位が5cmのメジャーを用いた場合の誤差を考えると,±5cmとなり,100mに対して0.05%となる.100mを20秒で走ってもタイムの影響は0.01秒未満で,学校の体育で使用するには5cm刻みのメジャーで十分だと分る.

 データ解析では,整理したデータを見て値の変化等の理由や値の意味を考える作業をする.さらに実験の企画段階で予定した項目以外にも観察を行い,実験中に観察しメモを残すことも重要で,考察の糸口になることは多い.測定値も観察も異状は考察の対象になり,その異状に気付くには知識が必要で,事前の勉強は不可欠である.ただし予備知識の影響で考察が偏ることも多いので,注意が必要である.
 解析から導いた考えには,参考文献を用いて裏付を与える.このとき使用した参考文献は明示する.なお参考文献を読むことに没頭して,実験結果を無視してしまうケースは多々あるので,注意を要する.
 
 実験は技術的な目的があって企画・実施されるが本来の姿だが,学生実験は教育が目的なので差し迫った技術的な目的はない.学生自身が実験内容を理解して,ふさわしい目的を見出す必要がある.

加藤のページへのリンク