深屈曲の罠1:大腿下腿接触力

 深屈曲に特有の現象,まずは分かりやすいところから,

大腿下腿接触力

について.
 当然のことですが,膝を深く曲げると,太ももとふくらはぎの後面同士が接触して,接触力がかかります. 膝を深く曲げていくと,大腿下腿の押し合い圧し合いが始まって,それ以上屈曲できなくなる,という理解でも間違いないと思います.
 
最初の報告は多分これ→Zelle te al, Clinical Biomech 22(7),2007

 このとき,もちろん筋にも張力がかかっています.膝を曲げているので,特に太ももの前面,

大腿四頭筋

が張っていると考えられますね. これらが力学的に釣り合っているとき,膝にどのくらいの力がかかるかを計算することは別項で説明しました.

 この大腿下腿接触力が中々の曲者.
 図のようなセンサシートを使って測定するのですが,

値がかなりばらついて

,一般的な膝関節キネティクスの解析に用いるのは難しいほどです. 論文によっても値に差がありますが,それ以上に同一論文の中の被験者によってもかなり差があります.
 
(むしろ

平均してしまうとばらつきが慣れて揃って見える

ほどに・・・)


 我々も測定しながら,同一被験者でもかなりばらつくなという感想を持っていました.同時に,同じ正座や蹲踞の姿勢でも,

上体の姿勢

によって値が変わるらしいことが分かってきました.
 
この論文を書いていた頃です:Calculation of the knee joint force at deep squatting and kneeling:J-STAGE

 そして,被験者の身体寸法の情報と関節角度の情報を使って,回帰式によって大腿下腿力を推定すれば,ばらつきをかなり抑制できることが分かりました.
 
蹲踞を対象にした実験の結果:Estimation of thigh-calf contact force during deep knee flexion, using both anthropometric and motion measurements:J-STAGE

 今一歩アイデアがあれば,もっと原理的・統一的な推定式で説明できるかもしれません.逆に被験者の属性や対象姿勢を増やすと,推定式も増やさないといけなくなる可能性もあります.
 現象としてはシンプルで「すごく難しい」ものでは

ない

はずなので,実験を追加して,もう少し詰めて考えたいところですね.



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